テレワーク導入のポイント|成功・失敗例や導入手順を紹介

働き方改革やデジタル化によって、テレワークの普及が進んでいます。さらにコロナ禍では、感染拡大防止のためにテレワークに移行する企業も多く見られました。
しかし、「職場がテレワーク環境に対応していない」「一部の部署・従業員は出社が必要になる」といったように、導入が進まない、あるいは失敗してしまったケースもあるのではないでしょうか。
テレワーク導入でお悩みの際は、専門のコンサルタントに頼ることも解決策のひとつです。
今回は、企業におけるテレワークの必要性を踏まえ、導入のポイントについてご紹介します。 永田システムデザイン事務所では、テレワーク導入に関するコンサルティングサービスを提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

企業の導入状況から見るテレワークの必要性

テレワークとは、職場という物理的な環境に依存せず、自宅や出張先、外出先などで仕事をする働き方です。ICT(情報通信技術)を活用しテレワークを導入することで、時間や場所の有効活用が可能になり、柔軟かつ多様な働き方を実現できるようになります。

総務省の『令和2年通信利用動向調査』によると、令和2年のテレワーク導入企業は、導入予定を含めて58.2%という結果でした。前年の調査結果では導入予定企業を含めて29.6%だったため、1年間で約2倍に増加していることになります。

また、企業のテレワーク導入目的については、「非常災害時(自然災害、感染症の流行など)の事業継続」が最も多く、次いで「勤務者の移動時間短縮・混雑回避」となりました。他にも、「業務効率の向上」「ワークライフバランスの向上」など、これからの働き方を考えた導入が見られています。

このように、新型コロナウイルス感染症の流行が、企業のテレワーク移行を後押しするきっかけとなっていることが分かります。また、業務効率化による生産性向上、ワークライフバランス向上による人材確保といった働き方改革を実現させるためにも、テレワークの必要性が高まっています。
出典:総務省「令和2年通信利用動向調査

失敗例から見るテレワーク導入のポイント

実際にテレワークを導入したものの、さまざまな問題や課題に直面し、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。ここからは、失敗例を交えながら、テレワークの導入ポイントについてご紹介します。

1.テレワーク導入目的を明確にする

テレワーク導入のよくある失敗として、目的を明確にしないまま闇雲に導入を進めてしまうケースが挙げられます。「他社が導入しているから」「時代の流れに合わせて導入した」という理由で導入すると、テレワーク制度が定着しない可能性があります。

テレワークの導入自体を目的にせず、「導入によってどのような効果・利益を得たいのか」といった目的を明確にしましょう。会社のトップから社内全体へ導入目的を共有することで、従業員の理解・協力を得やすくなり、テレワークの円滑な導入や活用促進につながります。

2.テレワークの推進体制を構築する

テレワークの導入を進めるにあたり、組織の推進体制を構築することも重要です。一部の経営者層や部署のみで進めると、部門をまたいだシームレスな連携ができず、テレワークの導入が円滑に進みません。また、テレワークに対する各部署の認識やモチベーションにズレが生じ、懸念が生まれてしまうことも考えられます。
経営者層や部署間で共通認識を持ち、組織横断的にテレワークを推進していくために、テレワーク導入にかかわるプロジェクトチームを設置しましょう。
プロジェクトチームの構成は、以下が挙げられます。
▼プロジェクトチームの構成例

  • 情報システム部門
  • 総務・人事部門
  • 経営企画部門
  • 導入対象となる部門

なお、プロジェクトリーダーには導入対象となる部門のトップを置くことがポイントです。部門に所属する従業員からの理解を得やすく、より円滑にテレワーク導入を進められます。

3.現状課題を抽出する

業務体制やプロセスなどの現状を把握したのち、テレワーク導入における課題を洗い出しておくことも重要なポイントです。課題を把握しないまま導入に踏み切ると、「従業員のテレワーク実施環境が整っていない」「業務のデジタル化が困難」といった理由から、結果的に出社が必要になってしまうことがあります。
テレワーク制度の活用を促進し、定着させるためにも、事前に以下のような項目を洗い出しておきましょう。

▼現状課題の抽出が必要な項目例

  • 業務内容(各部署の主要業務、バックオフィス業務、管理者業務)
  • 業務方法(紙・FAX・電話・ツールなど)
  • 業務体制(従業員同士の連携フロー、連携が必要な部署など)
  • 労務管理(勤怠、労働時間、給与、福利厚生など)
  • 人事管理(評価制度、人材教育、人材採用など)

業務内容や管理体制などを“見える化”することで、「テレワークでも対応できる業務かどうか」「テレワーク化するために必要な環境はなにか」など具体的な計画を立てられるようになります。

4.テレワークについての社内ルールを整備する

テレワークを導入するにあたって守るべきルールを取り決め、従業員に周知しておくことがポイントです。テレワークに関する新たなルールを整備していないと、職務怠慢やオーバーワークの発生、業務形態との不一致、情報漏洩などのトラブルが起こりかねません。
社内ルールとして定める内容には、以下が挙げられます。

▼社内ルールで定める項目例

  • 各部署のテレワーク形態(在宅、モバイル、サテライトオフィスなど)
  • テレワーク制度の利用頻度(終日、隔日・隔週での交代、事前申請など)
  • 勤怠管理の方法(始業・終業の連絡、労働時間の管理方法など)
  • テレワークに関する就業規則(通信費の負担、人事評価制度など)

とくに勤怠管理や人事評価については、テレワーカーとそうでない従業員に不公平感が生まれないようルールを設定しておくことが重要です。

5.ICTツールの導入と環境整備を実施する

テレワークの導入に欠かせないのが、ICTツールの活用です。自宅や外出先でも円滑に業務を遂行できるよう、部署・従業員間でスムーズに情報共有できるネットワーク環境を構築する必要があります。
テレワークに対応できる環境を整備できていないと、従業員同士のコミュニケーション不足によるミスの発生やモチベーションの低下、頻繁な電話連絡による業務効率の低下を招き、失敗につながります。
このような失敗を防ぐために、以下のようなICTツールを導入し、円滑なコミュニケーション・業務遂行ができる環境を整備することがポイントです。

▼ICTツールの例

  • Web(オンライン)会議システム:Zoom、Google Meetなど
  • チャットツール:Slack、Chatworkなど
  • タスク、勤怠管理ツール:RecoRu、AKASHIなど
  • グループウェア:G Suite、Microsoft Teamsなど
  • ペーパーレス化ソフト:Adobe Document Cloud、Handbookなど

社内サーバにアクセスするためのリモートデスクトップ、手元のパソコンやスマートフォンから業務データを確認・共有できるクラウドシステムなどを導入することで、テレワーク環境での業務がスムーズになります。

6.セキュリティ対策を実施する

テレワークの導入によって社外からのアクセスが可能になると、ウイルス感染や情報漏洩、などのセキュリティトラブルにつながるリスクがあります。
使用する端末やネットワークのセキュリティ対策を強化することがポイントです。

▼セキュリティ対策例

  • セキュリティ対策ソフトを導入する
  • 機器持ち出し時のセキュリティガイドラインを取り決める
  • 複数のモバイル端末を一元管理できるツールを導入する

社内のサーバやデータへのアクセス権限を設定できるツールや、不正アクセスを監視できるツールなどの導入も有効です。また、使用してもよい端末・アクセス場所をルールとして定めておくことで、セキュリティ管理がしやすくなり、リスクの低減につながります。

7.テレワーク導入の評価・改善策を実行する

テレワークの導入にあたって目的設定や環境構築をしていても、導入後に課題が現れることも少なくありません。組織全体で一斉にテレワークへ移行すると、業務遂行に支障をきたしたり、情報共有や取引先とのコミュニケーションなどに問題が生じたりする可能性が高まります。
テレワークを着実に進めていくには、一定の試用期間を設け、小規模からスタートさせることが重要です。テレワーク導入は、あくまでも入口です。どのような効果があったのか従業員にヒアリングを実施し、導入後のデータを定量的に評価しましょう。そのうえで、課題・不満を解決していくことが、成功につなげる重要なポイントです。
また、テレワークの試用期間は繁忙期と被らないように設定するとともに、トラブルが発生した場合にフォローできる体制もしっかり整えておく必要もあります。

テレワーク導入の成功事例

テレワーク導入の成功事例を、厚生労働省主催『輝くテレワーク賞』を受賞した企業のなかから1つご紹介します。
味の素株式会社では「どこでもオフィス」というテレワーク制度を導入しています。この制度では、自宅やサテライトオフィスに加え、セキュリティ環境と集中できる場所が整っていれば、どこでも勤務が可能になります。 社内への周知や労務管理・通信環境の整備などを徹底したことにより、円滑なテレワーク勤務を実現しました。また、労働時間の工夫をはじめ、障がいを持つ社員や高齢社員の活躍、育児・介護との両立など、ワークライフバランスの向上も実現しています。

テレワーク導入支援制度や導入補助金の活用

テレワークの導入には、ICTツールの導入やネットワーク環境の整備が必要です。中小企業の場合、資金力の問題から導入に踏み切れないというケースもあるのではないでしょうか。
そこで活用したいのがテレワークに関する支援・補助金制度です。官公庁が運営する支援・補助金制度には、以下があります。

支援・補助金制度名制度概要実施官公庁
令和3年度テレワークマネージャー相談事業・ICTツールやセキュリティ等、テレワーク導入に関する無料コンサルティング。 ・テレワークマネージャー(ICT等の専門家)が開催。総務省
令和3年度人材確保等支援助成金 テレワークコース・テレワークを新規導入する中小企業向け。 ・テレワーク用機器の購入や就業規則変更にかかった費用の一部を助成する補助金制度。 ・最大助成65%、限度金額200万円。厚生労働省
IT導入補助金・中小企業・小規模事業者向けの補助金制度。 ・自社のニーズや課題に沿ったITツールを導入するための経費を一部補助する。 ・導入企業の業務効率・売上向上をサポートする目的がある。経済産業省

上記の他にも、各自治体で行われている独自の支援・補助金制度もあります。テレワークの導入をご検討の際は、自社所在地の自治体にテレワーク支援・補助金制度があるかどうか調べておくことをおすすめします。 支援・補助金制度に該当するのか不明な方、申請手順などに不安がある方は、永田システムデザイン事務所までお気軽にお問い合わせください。

テレワーク導入は永田システムデザイン事務所へご相談ください

テレワーク導入を円滑に進め、定着化を図るためには、目的設定や社内ルールの見直し、ICTツールの導入、環境構築などいくつものステップが必要です。
「自社でテレワーク推進のための人材を確保できない」「ICT環境の整備に必要なノウハウがない」という場合は、専門のコンサルティングサービスを利用することがおすすめです。 永田システムデザイン事務所では、テレワーク導入をはじめ、企業のデジタル化に向けたさまざまなコンサルティングサービスをご提供しております。
テレワークの導入や導入したが本当に自社の業務にマッチしているのかなどでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。